ボイジャー1号の測定する宇宙線が急増
NASA(アメリカ航空宇宙局)は6月14日、無人探査機「
ボイジャー1号」が
太陽圏から脱出する歴史的な日が近づきつつあると発表した。
これは35年前に打ち上げられ、太陽圏の果てを目指して爆進中の「ボイジャー1号」が測定する
宇宙線が、ここ1か月で急激に増えていることから推測されたものだ。
太陽圏の果て(ヘリオポーズ)の手前では、時速150万kmという猛烈なスピードで吹き荒れる太陽風が、恒星間ガスにぶつかって急速に減速され
ターミネーションショック(末端衝撃波面)が形成される。
ボイジャー1号は現在、ターミネーションショックを飛行中だ。ボイジャー1号が
178億kmの彼方から16時間36分かけて届けたデータを分析した結果、探査機の周囲の宇宙線が急激に増加していた。
太陽圏と恒星間空間の境界では、太陽風の荷電粒子と、恒星間空間から飛んでくる宇宙線が入り交じっている。宇宙線の増加は、
恒星間空間に近づいている証拠だ。
(画像提供:NASA/JPL-Caltech)
太陽圏を脱出すると磁場の方向が変わる
太陽圏脱出の目安は3つあり、
宇宙線量の増加のほか、太陽からの
荷電粒子の減少、そして探査機周囲の
磁場の向きの測定で境界を超えたことが判断できる。
太陽からの荷電粒子は、現在のところまだゆっくりとしか減っていないが、太陽圏を脱出すれば急激に
減少すると考えられる。
探査機周囲の磁場の向きは、黄道面に沿って水平であればまだ太陽圏内、
垂直になれば恒星間空間に入ったことになる。磁場の方向に関するデータの分析には時間がかかるため、ボイジャーチームは現在、最新のデータ·セットについて解析中だという。
(画像提供:NASA/JPL-Caltech)
35年前の夢の実現が近づいた
ボイジャー打ち上げ時からプロジェクトに携ってきたEd Stone氏は、
ボイジャーが打ち上げられた1977年は、宇宙時代の幕開けからわずか20年しか経っていなかった。ボイジャーチームは恒星間空間に行けることを夢にはみていたが、いつそれが実現されるのか、到達までにボイジャーが動作し続けるのか誰にもわからなかった(NASAの記事より)
と当時を感慨深く振り返った。
ボイジャーに搭載された
原子力電池は、故障しない限り2020年まで動き続ける。もうすぐボイジャー1号は、恒星間飛行をする人類史上初の探査機として歴史に名を刻むことになるだろう。
NASA
http://www.nasa.gov/mission_pages/voyagerAstroArts
http://www.astroarts.co.jp/news/JAXA
http://www.jaxa.jp/article/interview/vol18/p2_j.html